次期王の行方 ~真面目文官は押しに弱い?~
 ここは南大陸の南中にある『賭博の国・クスイ』と呼ばれる小国だ。
 1ヶ月前に突然、王宮に仕える臣の文官・武官を集めて国王から告げられた言葉。
 それが現在の王宮の騒ぎの元になっている。
 別に王家だの貴族だのと堅苦しい身分の風習があまりないという、気ままな国であるために、後継者である次期王は王が決定する。
 それは親族でも誰でも構わない。
 もちろん高官たちから認められないといけない。
 そして現国王の言葉は皆の意表をついていた。
「まず最初に、実は私には血の繋がった息子がおる」
集まった王臣の誰もが初耳!という驚きの言葉を表情に顕していた。
「それが私と違って学もあってよくできた息子なんだよ」
 ふっと国王としての表情を崩すも、複雑そうな笑みを浮かべる。
「しかし、そいつは王になるのを拒んでおる」
 ざわざわとざわめきが広間一杯に広がっている。
「今から三か月の間に、息子を説得して王になることを承諾させた者には次期王の側近の位を授けよう」
「・・・ご子息はどこにおられるのですか!?」
 我先にと質問をする臣下達だが、
「内緒だ」
「は?」
「息子にもこの話は伝わっている。三ヶ月の期間で、彼を見つけ出し説得してみろ」
 楽しそうに告げる王に皆、毒気を抜かれポカンとするばかりだ。
「その間で説得できなければ・・そうだな・・・」
 王の側に控えていた青年文官に目を留めると、笑った。
「このクーデノムを側近にして次期王を選ばせることにしよう」
「王!?」
 彼の驚きと抗議の声は広間に沸きあがったどよめきで消されてしまった。
 満足そうに声を上げて笑う国王に何も言い返せないまま、クーデノムは大役を圧しつけられてしまったのだった。
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