マリンシュガーブルー
そう、あなたはやり手だもの。センターの中で気に入ってくれたから可愛がってもらえただけなのかもしれない。やり手は見苦しい修羅場もしないし、整理するのも下手は打たない。
そういう男だから素敵に見えていたけれど、自分が切られる側になるとこんな惨めな気持ちになる。でも……彼の力で支えられて生きていた美鈴に、彼を凌駕する自信などないのは確か。
彼が異動することで、この恋が終わった。
でも、お客様に喜んでもらえるこの仕事は好き、頑張っていきたい美鈴の気持ちは本物。本物だからこそ、美鈴自身、彼がいなくなって身に沁みた。仕事ができた気になっていたけれど、半分は彼のアドバイスで上手く動けたから、仕事ができる彼のサポートが完璧すぎたから。親を失った子のような頼りなさが浮き彫りになる。
彼と同じフロアで働いている時は、自分はいまいちばん輝いていると、毎日が充実していたのに。どんどんくすんでいく――。
これまでは母がそばにいてくれたが、彼と別れる少し前に急死したこともあり、突然の別れにショックを受けた。父も他界していたため、母と娘ふたりで過ごしてきたのに。その母がいなくなって、恋人にも上手く逃げられた。
精神的苦痛が次々と襲ってきた。彼が異動し、頑張ってひとりでできる女になろうとしたけれど、頑張れば頑張るほど空回りをしていく……。