マリンシュガーブルー
そのうちに、弟がこの先もずっと瀬戸内のこの街で暮らす決意をしてくれた。
『姉ちゃん、店を建てて、独立しようと思うんだ』
その為、両親が残してくれた土地を幾分か売却することにした。少し残した不動産には副収入になるようなものに作り替えた。
代々の古い墓があるため、墓守を続けられる場所に弟が店を建てた。育った古い海辺の街から離れず、でも新道の新しい土地に店を構えた。
港も近く、海が見えるその場所は女性客に受けよく、平日はお友達同士の奥様達やママ友さん達が、休日はカップルが入ってくれるようになった。港も近いため、トラック運転手のドライバーも多い。
東京で専門学校生の時から飲食業に関わってきた弟のセンスは目新しいものがあったのか、この街の人達には新鮮だったのだろうか。
そして弟が忘れなかったのが『この街に馴染んでいる味』だった。この街で育ってきた者なら食べてきた料理に味を忘れない。それがこの土地の人達に受け入れられたのだと美鈴は思う。
妹も慣れない地方都市の生活に戸惑うこともあったようだったけれど、憧れの海辺のお店で旦那様とお商売を楽しんでいるようだった。
やがて。店が軌道に乗ったその時に、義妹が妊娠。フロアの接客を受け持ってくれるスタッフがいなくなった。
一時、アルバイトを雇ったようだったが、夫妻で通じあうような気の利く接客ローテンションができないと弟が嘆き、さらに長続きせず二ヶ月で辞めてしまったとのこと。