マリンシュガーブルー
だがビジネスマンの男はそれぐらいでは怯まなかった。拳銃を突きつけられているのに悠然と笑い、彼もジャケットの下から同じものを取りだし構えた。
「撃ったことないやろ。撃ってみーや!」
眼鏡の男が、デニムパンツの男に吼えた。
拳銃と拳銃を向け合う男達。もう近づけなくて、美鈴は震えていた。でもここで殺人事件など起きては、弟の店は立ち直れなくなる! そう思って一歩踏み出したい。でもピストルなんて初めて見たし、近づいて彼等がどうなるかわからなくておろおろするしかない。
「兄貴、こいつ、すこしずつ量を減らしてやがる。前からおかしい思ってたんじゃ」
眼鏡の男が、こんな状況なのにゆっくりと食事をしていたもうひとりのビジネスマンに告げた。
食事をしている男はがっしりしているが小柄な男、でも静かで落ち着いている。それでもゆらりと立ち上がり、デニムパンツの男へと近づいてくる。
もう額からだらだら汗を流しているデニムパンツの男が、今度は近づいてくる小柄な男へと銃口を向ける。
「おう、俺に向けたら、あっちから撃たれるでえ」
「おまえから撃てばいいんだ!」
デニムパンツの男が小柄な男へむけた拳銃の引き金に指をかけた。その指がほんとうに動いた!
パンパンパンと、耳をつんざく音が響いた。美鈴はもう怖くて、床にしゃがみそうになる。もうもうどうしていいかわからない! デニム男がほんとうに兄貴さんを殺してしまったかもしれない!