マリンシュガーブルー

 だがしゃがもうとした身体がぐいっと持ち上げられる。片腕を無理矢理ひっぱりあげられ、強引に立たされる。怖くてつむっていた目を開けると、すぐそこに眼鏡の男の怒りの形相がある。その男が美鈴を片腕で抱いたかと思うと、こめかみに銃口を押しつけてきた。

「そこのコック! そのスマホすぐに放らんかい! この姉ちゃんがどうなってもええんか!」

 男が叫んだのはレジカウンターの方向。視界の端にキッチンから出てきただろう弟が見えた。電話を片手にもっているところ

 眼鏡の男が、宗佑に銃口を向けたので、すでに発砲をしている男達だから容赦なく撃たれてしまうと気を失いそうになる。弟もそこは恐ろしい思いをしているのだろう、言葉通りに手に持っていた携帯電話をさっとカウンターに放って、無抵抗を示すため両手を挙げた。

「おう、使い慣れとらんもんで勝負せんことやな」

 乾いた音が響いた後の状況を美鈴はやっと把握する。デニムパンツの男が腕から血を流し床に倒れている。その男を兄貴が踏んづけていた。兄貴の手にもやっぱり拳銃。

 眼鏡の男に冷たい銃口を突きつけられながら、美鈴も悟る。この男達、うちの、弟の店で堂々と密会をしていたんだ。トイレにそれぞれ入っていくのは、そこでなにか取引をしていた?

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