マリンシュガーブルー
それでも……、力無く倒れている美鈴の身体の上に、空いている手をそっと乗せてくれていた。安心してください。あなたから離れませんよ。といわんばかりに。
その熱い手に美鈴もとりあえず落ち着いて、彼の後ろにいられた。
銃を構えたままの厳つい彼の冷静さも癪に障ったのか、眼鏡の男が床に落としてしまった拳銃を再度拾い上げようとした。
「それ以上動くな!」
店のドアが開き、そこから数名の警察官が突入してきた。
装備をしている警察官も拳銃を構え、眼鏡の男、兄貴とデニムパンツの男それぞれに銃口を向けた。
さらに後方から戦闘服姿の男達が突入、不審な男達へと突撃し、それぞれ制圧へ向かう。
「大丈夫ですか」
銃を構えていた体勢をといた彼が、床に倒れている美鈴へとやっと振り向いた。
でも……、美鈴は声を出せなかった。そして彼がややショックを受けた顔になったのも見てしまう。目線が、美鈴の胸元で留まっている。エプロンがずれてしまい、その下は思ったよりも荒らされてはだけた胸元がやや露わになっていたから。
なのに。彼の目がそこから離れない。じっと見つめて、惚けている。そして、彼と目が合う。その目に、美鈴は色を見た。こんな時なのに。でも、甘いなにかを感じずにいられない。
「おまえも動くな!」
気がつくと突入してきた戦闘服の警官が彼にも拳銃を向けていた。