マリンシュガーブルー
あの兄貴と眼鏡の男は組に所属するヤクザで、デニムパンツの男は借金があり、それを精算するため、反社会組織から『運び屋』をさせられていたと刑事から聞かされた。
彼等はこの港で落ち合い、まだ新しくできたばかりで姉弟がやっている目が行き届かない若い店を取引先としていた。デニムの男がトイレに入り、そこに薬物を置く。それを入れ替わりでトイレに入った眼鏡の男が押収する。そういうやりとりに利用されていたと知った。
トイレには防犯カメラはつけられない。まさか人々が楽しく食事をしているそこで取引などされるはずもない。そういう盲点をついて取引されていたとのこと。
三日目、ドアが開いた。信じられなくて、弟と一緒に固まってしまう。
ノーネクタイの白いシャツにグレースラックスの中年男性と、爽やかな青いチェックシャツの青年の二人組。
「なにか食べられますか」
「はい。いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
久しぶりの来客で、美鈴の声がややうわずってしまうほど。落ち着いてと深呼吸をして、いままでやってきた接客をこなそうとした。
中年男性と青年、上司と部下? 先輩と後輩? 親子には見えなかった。仕事でランチに立ち寄ったように見える。
あの人達はまともな男性なのかな。ビジネスマンの商談だと思いこんでいた自分たちを姉弟は反省していた。だからとて、入ってきたお客様全てに疑いの目を向けるなんてできない。