マリンシュガーブルー
弟と予測したとおり、彼の住まいはそんなに遠くはなかった。古い港町に入ったところにあった。
古いマンション、港が見渡せる。ワンルームの片隅に、とりあえず設置してあるような簡易ベッド。そこで素肌になったふたりが固く抱き合う。
この部屋は、美鈴がよく知っている潮の匂いがする。もうジャケットの匂いはないけれど、彼の皮膚の匂いに鼻先を擦りつけて、美鈴は彼の熱い皮膚に、入れ墨のある背中にしがみついていた。
彼も……。素肌になった美鈴を見るなり、もう堪らないといわんばかりの勢いで抱きついてきてくれた。
ベッドで重なってすぐ、彼が『俺のこと、怖くないのか』――と聞いてきたけれど、美鈴は『怖くない』と答えて彼に抱きついた。
挨拶のような口吻はなく、彼は美鈴の頬にキスをすると、そのままそっと耳元、首筋、そして胸元に優しくキスを落としてくれ……。そうして優しくしつこく、大きな手が時々意地悪に弄んで、ずっと熱く愛してくれる。
彼の熱さを感じながら、美鈴の肌もしっとりと汗ばんでくる。
彼の背中の模様が、うねる海の嵐のように見えてくる。
胸が張り裂けそうで、昂る涙が滲んでいる。
最後、彼の肌を愛してくれているキスが止まる。そこから先、躊躇っているのがわかった。
俺なんかとこんなことになっていいのか。でも俺は欲しい。欲しいけれど。
美鈴の身体をじっと見つめて迷っている、そんな彼の憂う眼差し……。彼の黒い目、その目に美鈴の胸は甘く締めつけられる。