マリンシュガーブルー
「そうでしたか。わかりました。どうぞ、お入りください」
「ありがとうございます。お邪魔いたします」
上品な口調に、柔らかな微笑み。少しふくよかでころんとした愛らしい女性。夏らしい紗の着物を着こなす奥様ふうの。どのような人を捜しているのだろうか。
宗佑も戸惑っていたが、着物姿の彼女が座れるよう席を用意してくれた。
テーブル席で向かい合い、美鈴にはオレンジティーが置かれる。彼女には、コックコート姿の弟がメニューを差し出す。
「よろしければ、是非。メニューからお好きなものお選びください。閉店したのでお代はいりません。サービスです」
「あら。ではせっかくですからお願いしちゃおうかしら」
「デザートもありますし、お食事も少しなら残っております」
「食事はしてきたの。そうね……、お醤油屋さんのバニラアイス?」
「この港町で江戸時代から続いているお醤油屋さんのたまり醤油をかけて食べて頂いております。塩アイスと似たようなものですけれど、風味が……」
美鈴はそこまで言って黙る。
「風味が?」
「いえ、聞かずに食べて頂いたほうがおいしく感じられると思います」
あの人の時と同じように言ってしまう。急に泣きたくなってきた。
「では、そちらと。アイスティーをお願いします」
「かしこまりました」
弟がキッチンへ下がっていく。でも何事だろうかと肩越しに振り返り、気にしていた。
「ありがとうございます。お邪魔いたします」
上品な口調に、柔らかな微笑み。少しふくよかでころんとした愛らしい女性。夏らしい紗の着物を着こなす奥様ふうの。どのような人を捜しているのだろうか。
宗佑も戸惑っていたが、着物姿の彼女が座れるよう席を用意してくれた。
テーブル席で向かい合い、美鈴にはオレンジティーが置かれる。彼女には、コックコート姿の弟がメニューを差し出す。
「よろしければ、是非。メニューからお好きなものお選びください。閉店したのでお代はいりません。サービスです」
「あら。ではせっかくですからお願いしちゃおうかしら」
「デザートもありますし、お食事も少しなら残っております」
「食事はしてきたの。そうね……、お醤油屋さんのバニラアイス?」
「この港町で江戸時代から続いているお醤油屋さんのたまり醤油をかけて食べて頂いております。塩アイスと似たようなものですけれど、風味が……」
美鈴はそこまで言って黙る。
「風味が?」
「いえ、聞かずに食べて頂いたほうがおいしく感じられると思います」
あの人の時と同じように言ってしまう。急に泣きたくなってきた。
「では、そちらと。アイスティーをお願いします」
「かしこまりました」
弟がキッチンへ下がっていく。でも何事だろうかと肩越しに振り返り、気にしていた。