マリンシュガーブルー
彼女には言えないけれど、美鈴は涙を流す香江を静かに見て心の中でひとり呟く。
大丈夫ですよ。入れ墨のあるあの人を好きになってしまったのだから。ヤクザの彼でも待っていたのだから。彼が刑事とわかってもおなじこと。
彼がどんな人でも信じている。そして彼はあの真摯な黒い目をもつ男らしい人ということはまったく変わらないの――と。
「行ってこい、姉ちゃん。うち臨時休業にしたっていいんだから」
宗佑まで涙を滲ませてくれている。
「兄の自宅の住所を渡しますね」
香江からそのメモを受け取った。
「でもね……。近所に住んでいる私が訪ねに行っても、滅多に会えないの。すぐに会えるかしら……」
それでもいい。彼に会えるまで、私、張り込む。
彼がどうやって美鈴を見つけて、どうして仕事のためにこの港町にいたのかわからない。でも彼は美鈴が知らないうちからそっとそっと近づいて、そしていつのまにか……。
だったら、今度は私が彼を見つけに行く。捕まえに行く。