マリンシュガーブルー
 綺麗で広い玄関に入れてもらい、きちんと輝いているフローリングの床に美鈴は硬直する。

 外観もエントランスもそうだったけれど、玄関に入っただけで、素敵な部屋だとわかった。
 でも生活感がなさそうで、彼のセンスをうかがわせるようなインテリアはなにもない。

「三日ぶりに帰ってきたんですよ。埃っぽいと思いますが、どうぞ」

 お邪魔いたしますと、美鈴はアンクルストラップの黒いサンダルを脱いだ。
 大きな背中の彼の後に付いていき、彼が開けたドアの部屋に入る。

 広いリビングで、そこにはよくあるダイニングテーブルにソファーセットにテレビがあり生活感がある。男っぽい匂いがどことなくする。

「座っていてください。……いったい、いつから俺を待っていたのですか」

 彼が対面式のキッチンの向こうにある冷蔵庫に向かう。美鈴はダイニングテーブルにある椅子を引いて座った。

「一昨日からです。夕方と、朝と、お昼とまた夕……と時間を分けて、ホテルから通っていました。今日、会えなかったら一旦帰るつもりでした」
「そんなに……、疲れたでしょう。香江はあなたを助けてはくれなかったのですか」
「あなたに会うのに、妹さんの助けはもういりません。私がそうしたかったのですから」
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