マリンシュガーブルー
「はあ、だからか。ここのところ何度も香江から『話したいことがあるから、帰る日を教えて欲しい』とメッセージが、いつも以上にしつこかったのは、こういうことだったのですね。俺の予定を知ることができたら、美鈴さんに教えられると思っていたのかもしれないですね。実は、香江にはあなたを会わせるつもりだと報告していたので、いつ会わせてくれるのかというしつこい催促かと勘違いしていました。いや、実際、催促されているんですけどね……」
抱き合った夜のように、彼が冷えたミネラルウォーターを入れてくれた。
「ほんとうに、色気のないもので申し訳ない……」
「いいえ。あなたを待っている間、あちこちのカフェに入って、食べたり飲んだり、お茶はもういらないです」
残暑の夕に外で待っていたから喉は渇いていたので、冷たい水はとてもおいしかった。
ふと気がつくと、美鈴の向かいの椅子まで来ているのに、彼が座らない。また美鈴を真摯な黒い目でじっと見つめている。
薄い不精ヒゲになっても、くっきりとした黒い眉と大きな黒い目、はっきりとした目鼻立ちの彼がそうして一点を見つめていると、目力があるせいかやっぱり厳つい顔。
「自分は、広島県警の刑事部捜査第四課にいます」
彼が唐突に、立ったまま美鈴に告げた。