ほんとの声を聞きたかった
『君はバンドが好きなんだね』
『えっ?』
『バンドのシリコンバンド、バックにつけてたから』
ライブに行くと現実に戻ってこれないからと、私の代わりに友達に買ってきてもらったシリコンバンド。
よく見ているな~と思いながら、カズマの顔を見た。
『俺らのバンド、見てみやん?』
その言葉がきっかけだった。
もしあの時、私が自転車で転んでいなかったら。
もし私が転んだあの時、助けてくれたのがオーナーさんではなかったら。
もしオーナーさんがあの時、カズマを呼び出していなかったら。
もしあの時、もしあの時、もしあの時…と全てが運命だった。