ほんとの声を聞きたかった
フッと私を小馬鹿にした笑みを浮かべ、目の前のヒロの威嚇を優しく見守るカズマの方へと視線を向けた。
日常茶飯事のこのやり取りは、仲介をするほどのものではない。
静かに見守っているだけですぐに収まる。
そう、わかってこその行動だ。
「ヒロ、もういいだろ?そろそろ練習すっぞ」
待つことに飽きたらしいリョウが、今日のこの威嚇を終わらせた。
「あ、そうだった。カズマのギター、俺がチューニングしといたから」
「ああ、ありがと」
厳ついヒロと、無口でクールなリョウと、穏やかなカズマ。
混ざり合わない色や個性の持ち主が集いに集って、この3人でバンドなんて…
“まとまるはずがない”
そう思っていた。