死神彼氏

序章 〈運命の出会い〉

「わぁー!! 遅刻だぁ!」
青空の下、駆けていく1人の少女が居た。
彼女こそ、月川柚乃だ。中学二年の始業式そうそう、遅刻しそうなのだ。
せっぱ詰まった彼女はいつもの通学路とは別の、『呪われた道』と呼ばれる近道を通って学校へ向かっていた。


いつもとは違う空気の漂う道、彼女はドキドキとワクワクと遅刻を胸に走っていた。道は一直線上の下り坂、それを下れば正門につく。
「よし! あと五分! 間に合う……はず!」
全力で駆け下りていると、舗装の無い砂利道に到達し、足をすくわれた。
「わっ!」
次の瞬間、バランスを崩した柚乃は坂道を一気に転げ落ち、学校は目と鼻の先だったのに関わらず数メートル離れた木に体を打ち付けてしまった。
歪む目線の先には、何やら赤く光る円が映る。その円の上には、人らしき者が映る……
消え行く意識の中、柚乃は決死の力で、
「助け…て」
そう言って気を失ってしまった。


気が付くと、柚乃は保健室のベットの上に居た。時間はもう三時間目であった。
「目が覚めた?」
柚乃が混乱していると、保険医の先生が優しく尋ねてくる。
さっきまで道で倒れてたはずなのに。
そう思っていると、柚乃の考えをくみ取ったかのように保険医の先生が答えてくれた。
「転入生が学校まで運んできてくれたんだよ。名前は聞かなかったけど、クラス同じなんじゃない?」
柚乃はすぐにでもクラスに行きたかったが、まだ安静にしていないといけないと言われ、昼休みに復帰することになった。

昼休みになり、復帰した柚乃は、早速転入生を探した。
すると教室に海道斬夜がいた。話しかけるのが気まずいが、転入生探しのためだと自分に言い聞かせ柚乃は聞いた。
「転入生の子、どこにいるか分かる?」
彼女の返答に、斬夜は無表情のまま即答した。
「居場所はわかんないが、名前は知ってるぞ。入る前からな、確か……D-天馬だった。外人の名前ポイがハーフらしい。」
耳寄り情報をもらった柚乃は、屋上へ向かった。そこで彼女は、ようやく彼と出会った。
見慣れぬ顔の男の子が、風に揺られ静かに眠っている。恐らく、この子であろう。
柚乃は思いきって話しかけてみた。
「あの、天馬君ですか?」
そう問いかけると、目を開けこちらを見てきた彼が言った。
「Who are you?」
「えっ、英語?えっと、あ、あいむ……」
突然の英語に戸惑いを見せる柚乃を見て、天馬は笑みを浮かべながら口を開いた。
「フフッ、ごめんね、日本語でいいよ。ちょっと癖がでて」
落ち着いた、朗らかな笑顔で天馬が答えた。
「私は月川柚乃。貴方って、朝倒れてた私を助けてくれた?」
柚乃がそう聞くと、
「あぁ、あの時の子か。気をつけなきゃ駄目だよ、あの坂、急だから。」
綺麗な笑顔でそう答えてくれた。

そして昼休みが終わり教室に帰ると、一番にある少女が駆け寄って来た。
「大丈夫!? 凄く心配したんだよ! もぉ! 遅刻したっていいんだから、怪我はしないでね!」
一方的に言われた柚乃は苦笑いで返した。だが無理もない。彼女、水野梨花は親友なのだから。
梨花の言葉に、柚乃はある疑問が浮かんだ。自分の身体のどこにも、〈怪我〉が無いのだ。
いくら保健室でも、ばんそうこう位は貼って終わりなはずだがそれすらも無い。何故だろう。
そんな疑問を浮かべながら、終わった六時間目だった。


下校中、あの坂を登っていく天馬を見つけ、柚乃はなんとなく後をつけて行った。
そうしたら、赤い光を放つ円の所にたどり着いた。
「ここって……」
柚乃は思わず、しゃべってしまった。
「月川さん? ここで何をしているんですか?」
彼女の声に天馬が振り向き、当然のごとく不思議そうな顔で問われる。
柚乃は正直に〈あの円の正体を知りたかった〉と答えた。
すると天馬が、驚くことを口にした。
「それが……僕も分からないんです。月川さんには、この円を見られてしまった。本当の事を話しましょう。」
本当の事って? 一体何を話すのか。
困惑している柚乃に、天馬の衝撃の一言が降り注いだ。
「実は、僕は悪魔なんです。」
柚乃は思わず、
「はっ?」
と言ってしまった。
「この円は、僕がこの世界に来る時に使ったものなんです。ですが、何のために何故ここに来たのか、それが思い出せないんです。」
天馬が真剣な目で柚乃を見つめ言うも、当の柚乃は告げられる真実を理解できずにいた。
「もう暗いですし、続きは今週の土曜日にしましょう。お家に行ってもいいですか? 十時に。」
柚乃はそれを二つ返事で了解すると、その足で家に帰った。
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