気高き国王の過保護な愛執
おそらくルビオは、そうしたものにある程度の耐性がある。理由を考えると憂鬱でしかない。


『彼は何度か殺されかけています』


水差しに水を満たし、常備している塩の結晶をほんの少し削って入れ、ルビオのもとへ持っていった。

薬の影響がぶり返して、ルビオは裸身に滝のような汗をかいていた。フレデリカは慌てて、洗面用の手巾を取ってきた。

水を飲ませ、忙しなく上下する胸を拭う。


「朝には楽になると思うわ。それまでは無理しないで」

「ありがとう。リッカは部屋に戻って」

「またそれを言うの」


思わずきつい声が出た。


「私の気持ちもお構いなしに、見捨てていけと言うのね?」

「ひとりになりたい」


顔に載せた腕の陰から、強情に言い張る。


「無茶よ! 自分がどんな状態かわかってるの?」

「わかってるから言ってるんだ!」


突如発された大声に、フレデリカは驚き、ルビオを見下ろした。

荒い呼吸を、どうにかして抑え込もうとするように、歯を食いしばっている。


「リッカだって、わかるだろ…」


ぎくっと自分の身体が強張るのを感じた。

ルビオの上気した首筋、苦痛以外のものも含まれ始めた、熱い呼気。

苦しげに呻き、ルビオが顔をそむけた。


「ごめん、ぼくは、その前に、きみに謝らなきゃ…」


フレデリカは、はっとして、「いいわ」と首を振った。逃げ出してしまったときのことだ。
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