気高き国王の過保護な愛執
それなりに勇気を使ったのに、なによ、と腹を立てると、ルビオが微笑む。


「ぼくはきみになにも約束できない」

「約束なんかいらないわ」

「ぼくはあげたいんだ」

「ルビオ、あなた、なにもかもが勝手よ、わかってる?」


叱られてきょとんとするルビオに、噴き出しそうになるのをこらえ、フレデリカはきっぱりと言った。


「私はね、王様の約束なんかより」


汗が浮いていてさえ清潔な、気高さと素直さの同居した顔を見つめる。


「ここにいる、あなたが欲しいわ、ルビオ」


どちらからだったのか、ぶつけるようにキスをした。

唇を合わせたまま、ルビオがフレデリカの身体を自分の上に引き上げる。髪に長い指が差し入れられる。

熱い身体に身を預け、長い長いキスを受けた。


「震えてるわ、ルビオ」

「ぼくは、人を殺したかもしれない」

「陥れられた可能性もあるわ」

「そうじゃない可能性もある」

「それがわかるのが怖いの?」


記憶の扉が開かない理由は、ルビオ自身が開けたくないからだと、フレデリカも気づいていた。

だからこそこれ以上強要したくなかったのだ。無理やりこじ開けたら、ルビオの心を壊してしまいそうで。

フレデリカの顔を両手で挟み、ルビオが見つめる。

首がゆるゆると横に振られ、その唇がわなないた。


「ぼくは、きみが好きになってくれたぼくじゃなくなるのが、怖い」


彼が泣き出すのではないかと思って、慌てて頬にキスをした。恐怖に震える子供を慰めるように、優しく何度も唇を押しつける。
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