気高き国王の過保護な愛執
「ほんと、バカね」

「きみは怖くないの…」

「ないわ」


頭を胸に抱いて、湿っている金の髪をなでた。


「私が唯一怖いのは、あなたがこれ以上、ひとりで心を痛めることよ」


ルビオの腕が背中に回り、ぎゅっとしがみついてくる。


「忘れられてしまおうが、あなたが別の人みたいになろうが、構わないわ」


抱きしめ返して、頭のてっぺんにキスをした。


「どんなルビオも、絶対に好きだもの」


かき抱かれ、背中の紐がほどかれた。服を剥ぎ取るように肩がむき出しにされ、鎖骨の下のあたり、柔らかな場所に噛みつかれる。


「ルビオ」


突然のことに、頭がついていかず、息が弾んだ。思わず逃げようとするフレデリカの身体を、ルビオはがっちりと掴んで離さず、首に、肩に熱く口づける。


「ルビオ!」


ようやくのことで押しのけて、見下ろしたとき、心臓が鳴った。

見上げてくるルビオの目。彼が常にまとっている柔らかさはどこにもなく、熱っぽく滾り、フレデリカを欲している。

本当にバカね。

フレデリカは、愛しさとあきれがまざった感情に襲われた。


──きみが好きになってくれたぼくじゃなくなるのが、怖い。


そんなものは、すでにどこにもないのに。

ルビオは気づいていないのだ。王城で再会したときからもう、ルビオは村で過ごしたルビオそのままではなかったことに。

王子として王城で育ち、王位を継いだ、ディーターの気配をいつもどこかに漂わせ、ときおり重なり、どちらのものだかわからない顔を見せた。

ルビオの温かさとディーターの気高さ。心細さに憂える瞳と鋼のような孤高。それらはルビオの中に共生しており、それでもフレデリカの、彼への気持ちは少しも変わらなかったというのに。
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