気高き国王の過保護な愛執
「なんだい」

「ずっと一緒にいてあげたいわ。無理なのはわかってるけど」

「無理だよ、危ない。今思えば、きみが城へ来たとき、浮かれてクラウスに話したりすべきじゃなかったんだ。悔やんでも仕方ないけど、悔やんでる」

「浮かれたの?」

「そりゃ浮かれたよ。あんな不意打ち、卑怯だ」


ルビオが立ち上がり、椅子の背に手を置いてフレデリカを見下ろした。

羽織った上衣は肩を隠しているだけで、あの夜、身を委ねた逞しい身体が目の前にある。目のやり場に困る。

ルビオがなにも言わないので、フレデリカはさらに困った。


「あの…ルビオ」

「なに?」

「近いわ」


体温を感じるほどの位置にある、ルビオの腕と身体。それらに挟まれて、触れられてすらいないのに、拘束されたようにどこへも行けない。

目を泳がすフレデリカを、ルビオがくすっと笑う。


「これが男と女の距離だよ」


つまりはそういうことなのだろうとフレデリカにもわかった。

抱きしめられたことも、キスされたこともある。だが肌を重ねる以前は、こんなふうに、近すぎると感じたことはなかった。

ルビオが手加減してくれていたのだ。フレデリカへの愛情を隠さないルビオだが、それでもやはり、男として一線を引いたうえで、彼女に触れていたのだ。

それに気づくと、甘えん坊のルビオが、急に大人の、事実通り四つ年長の男性に感じられ、フレデリカは赤くなった。


「ごめんなさい、私、こんなときに、なにを考えてるんだろう」

「ぼくのことだろ?」


ルビオはフレデリカの腕を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。不思議なことに、この体勢のほうが、フレデリカはほっと息をつくことができた。


「いずれ、安全だと思える場所を見つけたら、そこできみをもう一度抱くよ」

「ルビオの約束は、あてにならないから」


二年前のラ・セバーダを思い出して、ふたりで苦笑した。
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