気高き国王の過保護な愛執
この男の目的は、いったいなんなのだろう。

できることなら一晩中ルビオのそばにいて、守りたい。だが急にそんなことをしたら、怪しまれるかもしれない。おかしなことはできない。

フレデリカは声が震えそうになるのを鎮め、極力自然に振る舞った。


「ええ、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


微笑む美しい顔が、壁のろうそくに照らされていた。


* * *


侍女のひとりが、すまなそうに頭を下げた。


「申し訳ございません」

「いいわ、気にしないで」


フレデリカが笑顔を見せると、侍女はうしろめたそうな顔つきになる。

薬草の勉強会を、抜けたいと言ってきたのだった。


「相反するふたつの情報が、どちらも根拠に乏しかったとしても、人はどちらか一方だけを信じるのよね。両方を平等に信じ、疑う人は少ない。なんでかしら」


大きな声で独り言を発したのは、草地に寝そべったイレーネだ。


「どういう基準で片方を選ぶのかしら。仲間が多いほうかしら。誰かに命じられたほうかしら。より、事実だった場合の脅威が大きいほうかしら?」


侍女はさっと顔を紅潮させ、頭を下げて走り去った。

フレデリカはイレーネのそばに座った。


「人の心の学問に興味がおありですか? 残念ながら私は明るくないんです。書院から詳しい人を呼べないか、聞いてみましょうか」

「ただの嫌味よ。あの女は王妃の側付きよ、下っ端だけどね。リッカを見ていたあの目つき! 気に入らないったらないわ」


小さな丸っこいミツバチをじっと見つめるイレーネに、フレデリカは困った顔をする。
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