気高き国王の過保護な愛執
「クラウスって、いたわね」


懐かしむようなイレーネの言い方に、フレデリカは驚いた。


「いらっしゃいますよ」

「しばらく顔を合わせてないわ、元気?」

「ええ、お元気です」


小さな村ほどの広さがある王城だ。そういうこともあるのかもしれない。

というよりイレーネの行動範囲が特殊だったというべきか。


「私も挨拶しようかな。小さい頃はよく遊んでもらったものよ」

「そうでしたか」


微笑ましく思う反面、その頃彼がなにを考えていたのか、わかったものではないと心の中で案じた。

渡り廊下から城内に入り、誰かにクラウスの居場所を聞こうと思ったのだが、そうするまでもなく見つけた。地下へ続く階段から、ちょうど彼が出てきたのだ。


「クラウス様」


フレデリカの呼びかけに足を止めて振り向く。その視線がイレーネに向いた。


「イレーネ殿下、これはお珍しい」

「珍しいって、なにがよ」

「普通に城内を歩いてらっしゃるお姿がです」


くすくす笑う彼に、ふくれて言い返そうとしたイレーネが、ふと眉をひそめた。

フレデリカはその様子に気づいたが、先に用件を済ませてしまおうと、心理学の専門家を呼ぶ案を話した。

相づちを打ちながら聞いていたクラウスが、「わかりました」とうなずく。


「いい考えだと思います。どんなふうに実現できるか検討します」

「ありがとうございます」

「フレデリカ殿と仲よくなられたようで、なによりです、殿下」
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