気高き国王の過保護な愛執
「あなたこそ、痛みは?」

「動かしてたほうが調子がいいみたいだ」


ルビオは肩をすくめ、なんでもなさそうに言う。


「無理しないで」

「あの畝をもう少し掘ったら、休ませてもらうよ」

「そうして」


フレデリカの肩に触れた指で、そっと皮膚をこすり、ルビオは離れていった。重い鍬を楽々と扱う背中を見ながら、フレデリカはまた痣に手をやった。

触れられた箇所が、熱を持っていた。




夜風に揺れてさかんに音を立てる鎧戸に耐えかね、寝床を出て修繕に向かった帰り、フレデリカはルビオの部屋から明かりが漏れているのに気がついた。

領主館として建てられたこの家は二階建てで、客用の部屋が一階にひとつ、二階にひとつある。二階の部屋は以前からフレデリカが使っており、一階をルビオの部屋にした。


「ルビオ、眠れない?」


木の扉をノックし、部屋の中を覗いた。寝台の上で、ルビオが横になって本を読んでいた。書物好きのオットーが集めた本が、この家にはそこらじゅうにある。

フレデリカが入っていくと、ルビオが顔をそちらに向けた。


「すまない、ろうそくを無駄遣いして」

「いいわよ。ハーブのお茶でもいれましょうか」

「眠くないわけじゃないんだ。ただどうにも眠るのが惜しくてさ。そんな夜、ない?」

「わかるわ」


フレデリカは持っていた燭台のろうそくを吹き消した。枕元の床に座り、ルビオが読んでいる本を一緒に見上げる。


「ぼくは、この本を読んだことがある」

「ほんと!」
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