気高き国王の過保護な愛執
「どうしてそんな目つきで私を見るんです?」

「お前がやったことを、知っているからだ」

「そうですか、ではこれもご存じですか?」


クラウスが優雅な仕草で両手を開いた。右手には、青い小瓶が握られていた。


「ああするよう、私に命じたのは、あなたです」


「嘘だ!」という叫び声を、自分のものではないみたいに聞いた。だだっ広い空間に、悲鳴は反響し、尾を引いて消えた。

嘘だ、嘘だ!


「『父よりも兄よりも、優れた王になれる』。あなたの口ぐせです」

「嘘だ…!」

「言い切れますか?」


悔しさに唇を噛んだ。頭の中を探っても、そこには暗い空洞が広がるだけ。

自分が言ったことも言わなかったことも、闇の中だ。この不安につけ込まれるのは、ルビオにとってもっともつらい。

クラウスがさみしげにルビオを見つめる。


「旧友の言葉を疑うのですか」

「やめろ…」

「騎士団で出会い、一緒によく怒られましたね。野営訓練でひとつの天幕に寝たこともあった。あなたは口数の少ない人でしたが、なぜか夜はよくしゃべった」


ルビオの眼前に、満天の星が広がった。身体の下の湿った芝、虫の声。

クラウスの思い出話がでまかせではないと、ルビオ自身が悟ってしまった。

一歩、向こうが足を踏み出した。ルビオは同じだけ後ずさる。


「あなたが私に毒を預け、お父上と兄上の食事に混ぜるよう命じたとき、私は驚きました。ディーターは正義を愛しましたが…そういった方面の思いきりがいい人とは思っていなかったからです」

「やめろ」


ルビオは首筋に汗が伝うのを感じた。手足が震える。

自分がクラウスに、命じた場面が、脳裏に再生される。いや違う、これは今聞いたことを、頭が勝手に仕立て上げただけだ。
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