気高き国王の過保護な愛執
ルビオはこちらを見なかったが、声が届いたことはわかった。黒い上衣に包まれた背中に、殺気のようなものが立ち上ったからだ。
緋色のマントが躍る。ためらいの消えたルビオの動きは、フレデリカの目では追えず、黒と赤の塊としか認識できない。
さすがイレーネは違い、目を細めて激化した競り合いを睨んでいる。
「おかしいわ、まだ…」
「陛下、お受け取りください!」
突如響いたその声に、クラウスとルビオを含め、全員が虚をつかれた。
広間の入り口をふさぐように、巨漢が立っている。長いマントに隠れていた手が、ルビオに向けて、なにかを投げた。
「あなたの剣です!」
クラウスが鋭く指笛を鳴らした。ゲーアハルトの背後から、護衛兵が集団で現れた。
渡すというより、突き刺す目的だったのではと勘繰りたくなるほど、剣はまっすぐ剣先をルビオに向けて空を走った。
ルビオがクラウスの隙を突き、わずかな距離を取る。空中にある剣を、己の持った剣で目いっぱい叩いて回転させると、持っていた剣を投げ捨て、新たな剣の柄を掴んだ。
それですら一瞬の出来事だったのに、そこからはもはや、フレデリカには、なにが起こったのかわからなかった。
まさに剣と一体になったルビオは、ひらめく光の筋と化し、あっという間にクラウスを壁際に追い詰め、その手から剣を払い落とした。
フレデリカから少し離れたところでふたりは睨み合う。
ルビオの顎から、したたる汗が見えた。
「ゲーアハルト卿!」
剣をクラウスの喉に突き付け、目をそらさないままルビオは声だけで呼んだ。
「ご心配なく、じきに終えます」
低い声がそれに応える。
彼の完璧な防戦のせいで、兵はひとりも広間に入れずにいた。いや、彼だけではない。ふたり…三人いる。
フレデリカはすさまじい打ち合いに目を凝らした。
忠臣にゲーアハルト、そして、金の髪の女性。それから、もうひとりは…。
緋色のマントが躍る。ためらいの消えたルビオの動きは、フレデリカの目では追えず、黒と赤の塊としか認識できない。
さすがイレーネは違い、目を細めて激化した競り合いを睨んでいる。
「おかしいわ、まだ…」
「陛下、お受け取りください!」
突如響いたその声に、クラウスとルビオを含め、全員が虚をつかれた。
広間の入り口をふさぐように、巨漢が立っている。長いマントに隠れていた手が、ルビオに向けて、なにかを投げた。
「あなたの剣です!」
クラウスが鋭く指笛を鳴らした。ゲーアハルトの背後から、護衛兵が集団で現れた。
渡すというより、突き刺す目的だったのではと勘繰りたくなるほど、剣はまっすぐ剣先をルビオに向けて空を走った。
ルビオがクラウスの隙を突き、わずかな距離を取る。空中にある剣を、己の持った剣で目いっぱい叩いて回転させると、持っていた剣を投げ捨て、新たな剣の柄を掴んだ。
それですら一瞬の出来事だったのに、そこからはもはや、フレデリカには、なにが起こったのかわからなかった。
まさに剣と一体になったルビオは、ひらめく光の筋と化し、あっという間にクラウスを壁際に追い詰め、その手から剣を払い落とした。
フレデリカから少し離れたところでふたりは睨み合う。
ルビオの顎から、したたる汗が見えた。
「ゲーアハルト卿!」
剣をクラウスの喉に突き付け、目をそらさないままルビオは声だけで呼んだ。
「ご心配なく、じきに終えます」
低い声がそれに応える。
彼の完璧な防戦のせいで、兵はひとりも広間に入れずにいた。いや、彼だけではない。ふたり…三人いる。
フレデリカはすさまじい打ち合いに目を凝らした。
忠臣にゲーアハルト、そして、金の髪の女性。それから、もうひとりは…。