気高き国王の過保護な愛執
「また祭だよ、リッカ」

「そうね…」

「あれはぼくにとって、リッカとの暮らしが終わった日でもあるけど、今の暮らしが始まった日でもある」


図面に目を落とし、ルビオは穏やかに語る。


「今度の祭で、終わらすんだ」


口調に込められた、静かな決意に、フレデリカはうなずいた。

終わらせるのだ。この忌まわしい惨劇の連鎖を。


「市井の感覚と教養を持ち合わせた方というのは、我々にとって非常に貴重です。フレデリカ殿、お力添えを期待していますよ」

「私でよかったら」


村にいた頃の、ルビオのずれっぷりを思い出して笑ったときだった。

扉が荒々しく叩かれ、返事を待ちもせず開けられた。ずかずかと室内に入ってきたのは、憲兵隊の制服を着た六名の男たちだった。

ルビオもクラウスも、「お前たちはなんだ」などという無駄な問いはしなかった。王妃の差し向けたものに決まっているからだ。

二名がルビオのうしろに回り、「失礼いたします」と断って、片腕ずつ拘束した。

初老のひとりが彼の前に立ち、書状を読み上げる。


「先王及び第一王子殺害を企てた首謀者として、あなたを捕えます」

「ずいぶんと懐かしい罪状だな。おれはもう、その件ではとっくに罪が確定しているのかと思っていたよ」


鼻で笑ったルビオに、隊員は冷たい視線を返し、書状を後ろ手に丸めた。


「おふたりの遺体が城内で発見されたのは、ご存じですかな」


ルビオがクラウスとフレデリカのほうを見た。クラウスは口笛でも吹きそうな顔で、眉を上げる。


「今回は、なかなか早かったですね」

「ご遺体がおわしたのは、陛下の許可なしには何人たりとも入ることのできない、"陛下の謁見室の中"。こちらをどう弁明されるおつもりか」


あっ、とフレデリカは息をのんだ。そこか!

ルビオとクラウスも、忌々しそうに唇を噛んでいる。
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