気高き国王の過保護な愛執
口では他愛もない会話を続けながら、絡む視線の糸は緊密で、しかも少しずつ、手繰り寄せられている気がする。

いや、手繰り寄せているのは自分かもしれない。


「ふうん」

「ルビオ…」


唇が重なった。

月のない夜。天井の近くに開けられた窓の格子の外は真っ黒な夜空で、星が我が物顔にきらめいている。ふたりのそばで、ろうそくの炎が、存在を主張するように揺らめき、ジッとかすかな音を立てた。

ルビオの指が、頬に垂れていたフレデリカの髪を梳き、耳の後ろに流すようにかけた。そのまま頬を手で覆い、すくい上げるように軽く上を向かせ、柔らかなキスを落とす。


「あなたはどこの誰なのかしら」

「普通こういうときは、どこの誰だってかまわないわ、じゃないのかい?」

「今のあなたに"普通"を説かれてもね」


吹き出す吐息が、互いの唇をくすぐる。

最後にさっともう一度フレデリカにキスをすると、ルビオは枕元のろうそくの炎を彼女の燭台に移し、元のほうに息を吹きかけて消した。


「おやすみ」

「おやすみなさい」


暗くなった部屋で、ルビオが毛布の中に入るのを見届け、フレデリカは戸を閉めた。廊下の暗がりは穏やかで、先ほどのふたりの行為を許容してくれている気がした。

革の靴で、木の階段を踏みしめて上階へ上がる。ふと振り返ってオットーの寝室を確かめた。安らかな眠りの気配がした。

フレデリカは自室に上がり、長い髪を散らして寝台に仰向けになった。

胸がトクトクと、熱く音を立てていた。



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