気高き国王の過保護な愛執
革の装丁をめくり、はっとした。


「どうしました?」

「クラウス様…勅使を出す許しをください」


聖書を凝視したまま声を震わせるフレデリカに、クラウスも顔色を変える。


「あなたの頼みでしたら。ですが、どこへ」


フレデリカは決然と言った。


「王立書院へ」


* * *


ルビオが投獄されて二日目の夜が過ぎた。

一睡もできず、フレデリカは自室の寝台で横になっていた。

ルビオが一番参っているだろうに、自分が万全でなければ、いざというとき役に立たない。それはわかっているが、眠れない。

明け方の光は、城内には差し込まない。

外の空気でも吸ってこようかと、身体を起こしかけたとき、物音を聞いた。

誰かが扉を叩いている。


「誰?」

「失礼いたします」


滑り込んできたのは、あの金髪の、少年のようになった女性だった。黒いローブに身を包み、燭台を手に音もなく入ってくる。

フレデリカは呆気に取られ、彼女の透き通るような美しさに見入った。


「陛下からご伝言です」

「会ったの?」

「監視を避け、壁越しに。それと窓から、水と食料を投げ込みました」


胸をなで下ろした。清潔な水さえ飲めれば、当分は大丈夫だ。


「伝言をお伝えします。『きみは元気でいてね』と」
< 162 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop