気高き国王の過保護な愛執
ルビオらしい。ひと言しか交わせないときに、こちらの心配とは。今生の別れの台詞のようにも思えるけれど、言葉通りの意味だ。フレデリカにはわかる。


「確かにお伝えしました、それでは」

「あの、暖炉で助けてくれたのよね、ありがとう」


かぼそい灯りの中でさえ、彼女の仏頂面が、ふわっと赤らんだのがわかった。


「王へのご恩をお返ししたまで」


これ以上の触れ合いを避けるように、ローブのフードをかぶり、さっと出ていってしまう。

再び暗くなった部屋で、フレデリカは笑いを噛み殺した。

ねえルビオ。あなたの味方は増えているわ。




「"窓"が…!」

「こちらの使用人たちは戻しました。けがをさせるわけにはいきませんから」


日中、裏庭で会ったクラウスから、信じられない話を聞かされた。

王の顔見せの準備をしていたところに、「ここは王の処刑台になる」と主張し、飾りを引き裂き、鎖をかけた集団がいるらしい。


「けがをしたんですか」

「小競り合いになったようです。我々のために動いてくれていたのは、ディーターを慕っている者たちです。許せなかったのでしょう」

「狂ってるわ」


甲虫の幼虫を探して穴を掘っていたイレーネが、棒を土に突き立てた。


「暴動だけで飽き足らず、本来、私たちがなによりも守らなくちゃいけない市民同士を争わせるなんて、あの女は、越えちゃいけない一線を越えたわね」


その目が城の奥、高い塔のふもとへ向けられる。

地面すれすれに、いくつか覗く鉄格子。あのどれかが、ルビオの牢へ繋がっている。だがその鉄格子をまたぐように護衛が立っていて、近寄ることすらできない。
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