気高き国王の過保護な愛執
手が震えた。

三人のもとへ戻り、それぞれの顔を見つめる。


「みなさま、ご相談が」




王妃の前を歩いていた護衛が、突然消えた。

訝った彼女が顔を上げるより早く、うしろを歩いていた護衛も倒れ、一瞬ののち、王妃は背後から首に短剣を突き付けられていた。

まさに今、牢から出されたところで一部始終を見ていたルビオは、「ディーター!」という声に本能が応え、状況を理解しないまま、目の前にいる護衛を木製の手枷で殴って昏倒させた。

地下牢の廊下に、倒れた護衛が三人、ルビオと王妃、王妃に短剣を突き付けているゲーアハルト、そして暗がりから走り出てきたのは、クラウスと…。


「リッカ…!」


フレデリカはなにも言わず、ルビオと目を合わせた。その目がわずかに見開かれたので、自分はそんなにひどい様相なのかと逆に心配になった。

三日間、口にしたのはあの刺客が投げ入れてくれたひと袋分の水とパンをひとつだけ。飲まず食わずを覚悟していたルビオには天の恵みだった。

おかげで体力も思考力も、必要なだけは残っているはずなのだが。


「ゲーアハルト、軍人気質のお前が、王家の私を刺せるの?」


裏切った臣下に、王妃は気丈に侮蔑を投げかける。明るく引き取ったのはクラウスだった。


「ご心配なく、彼ができなければ私が刺します」

「妃殿下、お聞きしたいことがあります」


フレデリカが口を開いた。落ち着いた茶色のドレスは、よく似合うなといつもルビオが思っているものだ。


「陛下の…当時の第一王子の捜索隊を出したのは、いつですか?」


なんということはない質問に思えたのに、王妃が顔をこわばらせた。フレデリカの瞳が光る。


「行方がわからなくなったときよ、もちろん」

「具体的な日付は?」
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