気高き国王の過保護な愛執
「妃殿下、おそらくあなたのものと思われる毒を調べました。外国で狩猟に使われる、非常に珍しく強力な神経毒で、手に入れるのは困難だったはず。公に調査をすれば、出どころとあなたを繋ぐ線は、簡単に見つかるでしょう」


唇をわななかせ、どこも見ていないような王妃に、クラウスが重ねる。


「ちなみに今、イレーネ様があなたの部屋を探っています。まだ毒を残しているのは間違いないですからね。彼女のことですから、しっかり見つけてくれると思いますよ」


それから王妃の前に見を屈め、やれやれと息をついた。


「もう聞こえてませんね」


フレデリカは、腕の中で汗を流しているルビオの身体が、ふと重くなったことに気づいた。髪をなで、顔を覗き込む。

ゲーアハルトとクラウスも、微笑んで見下ろしていた。


「こっちもだわ」


* * *


花火の弾ける、軽やかな音が王城にも届く。


「何種類もあったわよ。一瞬で仕留めるのとか、じわじわ効くのとか」

「つくづく仲よくなりたくないですねえ」


机に並べた切り花で、髪飾りを作りながら、イレーネは「あんなことならとっとと忍び込めばよかった」と口を尖らせる。


「それもディーターの命令だと言われたら終わりです。"王妃である"ことと同時に、"ディーターではない"ことの証明が必要だったんですよ」


イレーネが製作途中の飾りをクラウスの耳の上に当て、「悪くないわ」と満足そうにする。


「王位継承権って、返上できないの?」

「なさりたいのですか?」

「カスパル兄さまのよ。返上しちゃえば、王妃なんて丸裸だわ。幽閉したところであの蛇女、今後もなにを企むか」

「残念ながら、生きている間はできません」
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