気高き国王の過保護な愛執
残念そうにイレーネは頬をふくらませた。


「ディーター兄さまがとっとと子供を作ればいいのよ。そうしたらその子たちは、カスパル兄さまより上位になる。いい案だと思わない、リッカ?」

「えっ?」


まさか自分に降ってくる話題だと思っていなかったフレデリカは、慌てた。


「ええと、そうですね」

「なに他人事みたいな顔してるのよ?」

「えっ」


どう受け取っていいのかわからず、戸惑うフレデリカに、イレーネがにっと笑う。


「でーきた。遊びに行ってくるわ」


波打つ金色の髪に、花飾りを挿し、椅子から飛び降りて部屋を出ていく。

入れ違いにルビオが入ってきた。

思わず、はっと息をのむような美しさだった。王の正装。艶やかな黒に染めた絹の服に、繊細な彫刻の施された革の防具。裏を贅沢な毛皮で張り、それでいて動くたび軽やかに弾む、足首まで覆う緋色のマント。

そのどれもが身体にぴたりと合っていて、ルビオの生命力にあふれる肉体を包みながら見せている。


「さすが私のディーター、すばらしく立派ですよ」


誇らしげなクラウスの賛辞に微笑みを向け、ルビオはまっすぐ窓辺に行った。

王城の高い位置にあるこの部屋からは、広場の"窓"が見える。これからルビオは、はじめて王として、あそこに立つのだ。


「緊張していない?」

「ちょっとしてる」


一緒に広場を見下ろすフレデリカに、はにかんだ笑顔を見せる。


「まだ時間があるわ、お茶でも飲んで」

「フレデリカ殿のお茶は見事ですね。塗り薬も実にいい。丁寧に作られていて、塗る行為すら快楽と思えます。王室印で売り出してはどうですか、ディーター」
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