気高き国王の過保護な愛執
ルビオは微笑んでいた。

国民のひとりひとりに挨拶をするように、ゆっくりと広場を見回す。

その唇が開いたとき、観衆の緊張が最高潮に達したのをフレデリカは感じた。


「心配をかけた」


声を張り上げている印象はない。だが不思議とその声は、どこまでも通った。


「先王と兄上は亡くなった。国儀を執り行い、冬至まで王城は喪に服す。王都にまで喪章は課さない。ただそれぞれ、故人の人柄と統治を思い出してくれればいい」


はじめて聞いたとき衝撃を受けた、流麗なケーニヒス・クラン。

そこにルビオのまっすぐな性格が加わると、こうもすっと人の心に入るのか。

フレデリカは目だけで周囲の様子を探った。誰もが心を奪われていた。


「さて、ここで約束をしたい」


ルビオの口調が、急にくだけた。聴衆がはっと魔法から解かれたような顔になる。


「おれは王城が、閉ざしすぎだと感じた。顔の見えない王室は、みんなにとってもさぞ、不気味で理解不能だったと思う」


どよめきまじりの笑いが起こり、ルビオは満足そうに、にこっと笑った。


「王城にかかる橋を広げる。馬車すら通れない護りのための道は、もはやこの国にはいらないものだ。祖父が埋めた青い石と同じように、平和の象徴として、手を繋ぎ、走って渡れる橋が、王都と王城を繋ぐ」


湧きかけた歓声を手で制し、ルビオが続ける。


「土と日の曜日は門と前庭を解放する。誰でも入れる。くつろぐのも市を開くのも、好きに使ってくれていい。新年までにおれたちは、これらの準備を整える」


人々はもう、わくわくと弾む心を抑えきれないように、喜びを発していた。広場を包む歓喜が、目に見えるようだった。

王がそれらに向け、いたずらっぽい笑みを見せる。


「最初に足を踏み入れる者は、このおれが出迎えよう」


怒号にも似た歓声が湧き起こった。
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