気高き国王の過保護な愛執
終章
「安直でごめんなさいね?」
「怒ると思ったよ…」
王の私室で、フレデリカはルビオの枕元に座り、冷たい水で布を絞った。
三日間の投獄を終えてから"窓"に立つまで、準備のため休む暇もなかったのだ。城に戻った後、熱を出したのも当然だった。
「大事なところで寝込むなんて、まるで子供ね」
「役目を終えてからなんだから、いいだろ…」
静かな夜だった。昼間の祭の熱狂は、王都をまだ寝かせはしないが、喧騒はこの王城までは追ってこない。
今頃王都では、すべての店が軒を解放し、飲めや歌えの騒ぎだ。王城で働く者たちも、参加してよいとルビオが触れを出すと喜び勇んで繰り出していった。
ひっそりと声をひそめたくなる王城の空気だが、これまでのように、冷たいとは感じない。部屋の隅の燭台の灯りは、ただ穏やかだ。
ルビオのさらさらした金髪をなでる。今日、これは全国民のものになってしまった。ちょっと悔しい。
「一市民として、あなたが誇らしいわ」
「心配しなくても、ぼくはきみだけだよ」
どうしてわかったんだろう。
赤くなるフレデリカを、ベッドに横になったルビオがにやにやと見上げる。
「ところで、今やぼくのベッドは、城内でももっとも安全な場所になったといえると思うんだけれども」
「よかったわね、これで安心して眠れるわね」
「話が違うよ!」
「話ってなによ!」
ルビオはふてくされ、「とぼけるんだ」と濡れ布巾で顔を隠してしまう。
「熱があるくせに、なに言ってるのよ」
「なんだ、わかってるんじゃないか」
「病人はおとなしくしてなさいってことよ」
「ちょうどこのくらいの熱って、逆に暴れたくなるんだけど、知らないの?」
「お茶をいれてあげるわね」