気高き国王の過保護な愛執
あたり前だろ、とむくれた声を出し、椅子のひとつに腰かける。お茶が目当てだと気づいたので、フレデリカは自分のカップに新しく注ぎ、ルビオに渡した。


「ありがと、寒くなってきたね」

「橋もお城も、順調に改築が進んでるわね。新年が楽しみ」


ルビオは橋だけでなく、城にも手を入れることにしたのだった。窓を大きくし、採光用の隙間をあちこちに入れる。

そしてその作業のかたわら、謁見室の背後の壁には、ひそやかに慰霊の言葉が彫られた。


「そうだルビオ、王立書院からね、アカデミーの件はいかがかって書簡が届いたの。たぶんこの間私の名前で連絡したから、私のほうに来ちゃったのね」

「あっ、どたばたで忘れてた。イレーネの件だ、クラウス」

「なんです?」


首をひねるクラウスに、ルビオは「そうだった」とイレーネに向き直る。


「お前、王立書院が運営するアカデミーに入るのはどうだ? 好きなだけ勉強して、大学にも行ける」

「えっ…」

「お前がただどこかへ嫁ぐなんてもったいないと、クラウス=ジャン・ミュイが言ったんだよ」

「大学へ行っていいの?」

「行きたければ、もちろん」

「でも、結婚は? 大学に通ったりしたら、嫁げる歳を過ぎちゃう」

「したくないなら、しなくていい。多少変わり者扱いされるかもしれないが、それだけのことだ」


フレデリカは、そうかと驚いた。

王が相手を選べるように、王女であるイレーネも、政略上、無理にどこかへ嫁ぐ必要などないのだ。

イレーネは椅子に飛び乗り、「リッカ!」と両手を広げた。


「イレーネ様!」

「でもあと一年は王城にいるわ。リッカが兄さまに求婚されるところ、見届けたいから!」


ルビオとクラウスを蚊帳の外に置き、ふたりは抱き合って喜んでいる。
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