気高き国王の過保護な愛執
「しかしあのジャン・ミュイ、私としてなかなかきちんと仕事をしていたようですね」


クラウスが思案顔をする。


「そうなんだよ。それでなければさすがのおれも、たぶんどこかで気づいた」

「首輪で繋いで助手に使ってやりましょうか。いざというとき替え玉にもできる」


イレーネがすかさず茶々を入れる。


「二股がばれたときとかね」

「ばれるところまでが二股の楽しみです」


余裕の笑みを見せるクラウスに、王女は心底薄気味悪そうに目を細めた。

王城のてっぺんには、ルビオの在城を知らせる青い旗。

最近王都の人々は、あの旗が上がるのを楽しみにしているらしい。


「エル・ルビオの人気はすごいわよ。なんたって若くて美形だもの。妃候補は誰かって、女たちはその話ばっかりなんだって」

「見た目だけの王ですねえ、ディーター」


以前より少し軽装になったルビオが、風に顔を向ける。

どこからか運ばれてくる、麦穂の匂いがする。


「噂だけの王よりはいい」


そう言う声は、明るかった。



< 181 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop