気高き国王の過保護な愛執
泣きたいほど腹が立った。期間がどうだというのだ。どんな短い間だろうと、一片の嘘もなく、同じ時間を過ごしたのは事実なのに。

その記憶自体を軽んじられたようで、フレデリカは傷つき、一方で、そう言わざるを得ないルビオの状況もよくわかった。


「きみもすぐに耳にするだろう。ぼくは"血まみれの王"とも呼ばれてる」

「いわくつきって言われてるのは聞いたわ」

「それはずいぶん気を使ってもらったんだね」

「自虐は嫌いよ」


ぴしゃりと言ったフレデリカに、ルビオは面食らったように口を閉じ、それからからかうような目つきを向けた。


「残念だな、ぼくはきみのそういうところが好きなのに」

「光栄ですわ、陛下。私は何番目の妻にしていただけるの?」


ふんと皮肉で返したつもりのフレデリカは、ルビオがぽかんとしていることに気づき、すぐに自分がなにを言ったか理解して、赤くなった。


「あの、別に、妻にしてって言ったわけじゃなくてね」

「言ったよね?」


薬草の包みでルビオの顔を叩いた。

「やめろよ、ちくちくする」と首をすくめるルビオが、くすくすと笑い出す。

真っ赤な顔を自覚するフレデリカも、笑うしかなくなった。


「立てる?」

「なんとか」

「抱き上げて部屋まで運んであげたいけど、ぼくはきみを目立たせたくない。クラウスを呼びにやるよ。ここで待ってて」


フレデリカは、手を借りて立ち上がり、濃いワインレッドのドレスの裾を直した。


「ひとりで帰れるわ」

「無茶だよ、その足で」


言ったそばからフレデリカの身体はぐらりとかしぎ、ルビオの胸に捕まった。

フレデリカはすぐそばにある、ルビオの顔を見上げる。

無言の挑発を受け、ルビオは口をへの字に曲げ、顔をしかめた。
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