気高き国王の過保護な愛執
フレデリカは彼を見返した。


「犯人はわかりませんが、王位継承者を少しでも減らしたかった何者かの仕業とささやかれています」


彼女が顔色ひとつ変えず、その事実を受け止めたことを、クラウスは評価したようだった。表情をわずかに和らげる。


「一年前、突如姿を消したときは、ついにと思いました。それが戻ってきたと思ったら、あの素直さで、迎えに出た私を見るなり『きみはぼくの味方かい?』と、こうです」


フレデリカはつい噴き出した。そのときのルビオの様子も面食らったクラウスも、容易に想像がつく。

スパチュラやはさみを丁寧に布で拭いながら、クラウスは微笑んだ。


「こちらが彼の、生まれ持った本来の性質なのだろうと思いました。そういえば昔は、あんな無邪気さも見せていたかもしれないと思い出し、切なくなりましたよ」

「でしょうね」

「彼は孤独です。王位を継ぐ前から、ずっとね」


道具を箱に収め、革でくるんで、「置いていきますよ」と机の引き出しに入れる。部屋を出る間際、戸口で彼が振り返った。


「そばにいてあげてください」


フレデリカの返事を待たずに、忠臣は扉の向こうへ消えた。


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