気高き国王の過保護な愛執
いかにも女が放っておかなそうな風貌に、こなれた会話術を持つクラウスだ。ルビオはルビオであんなだし、彼らの少年時代が、どれだけ乱れていたとしても驚かない。

クラウスは、聞きたいが聞きたくないというフレデリカの複雑な心情を読み取ったように、そつなく微笑みを浮かべた。


「私はともかく、ディーターは、律儀で生真面目でしたよ」


見透かされたことに気づき、またクラウスの気遣いに、安易にほっとしている自分もいて、フレデリカはまた顔を赤らめた。




自室に湯を持ち帰り、寝台に腰かけて包帯をほどいた。

広くない部屋は、ここから机の引き出しに手が届く。イレーネ王女からもらった膏薬を入れておいた引き出しを探り、容器のほかに布の包みを見つけた。

あのとき落ちてきた包みの、もう一方だ。

手触りと重さから、てっきり乾燥させえたマグワースかと思ってしまっておいたフレデリカは、改めて中身を確かめ、はっとした。


* * *


「イレーネ様! ほら、あなたも」


自由に使える、週一度の休みが明け、今日も今日とて王女の捜索だ。

クラウス経由でフレデリカの依頼を受け、駆り出されたルビオは、裏庭の草むらを進みながら、控えめに呼んだ。


「イレーネ」

「もっと気持ちを込めて呼びなさい」

「本当にいいのかな、ぼくが呼んで」


フレデリカはうなずき、小さな包みをルビオの胸に押しつけた。


「この間、イレーネ様が上から落としたものよ。気づくのが遅れてしまったのだけど、それ、あなた宛てだわ」

「どうしてわかった?」

「その中身、薬草茶なの。記憶力の減退に効くお茶よ」


包みの口を開けて、匂いをかいでいたルビオが、ゆっくりとフレデリカを見る。彼女も見返し、うなずいた。
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