気高き国王の過保護な愛執
「無理しなくていいのよ」

「無理なんてしてないよ」


つんとすげなく返すと、ルビオがすねた。


「ひとりだけなんて無理よ。立場を考えなさいよ」

「立場の話をするならね、ぼくがひとりだけと言ったら、ひとりだけなんだよ」


そういう見方もあるか。

いつになく熱っぽく食い下がるルビオに、フレデリカは驚き、目の前の顔を見つめ返す。

嬉しい。

信じてもいる。

けれどそんな気持ちだけで一緒にいられるとも限らない関係なのを、わかってもいる。だからこそ気持ちだけでも交わしたいとも思う。

フレデリカに拾われて、ルビオの現実が始まったのとちょうど逆で、ルビオが現れてからのフレデリカの人生は、駆け足でめくるめく、信じがたいことの連続だった。

そして終わってもいない。むしろまさに今、その真っただ中という気分だ。


「なんで笑うの?」


ルビオが傷ついたような声を出したので、自分が笑っていたことに気づいた。


「ごめんなさい」

「ぼくはお断り?」

「笑ってごめんなさいって意味よ。私、考えすぎだなあって思ってたの」


柔らかいキスを、ルビオが頬にくれた。「知ってるよ」とささやいて、もう一方の頬を手でなでる。


「なんの約束もできなくて、ごめん。ぼくは今、自分のことだけで手一杯だ」

「いいわよ」

「ぼくが清廉潔白な王だと、いずれ自分で信じることができたら」

「ルビオは清廉潔白よ」
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