気高き国王の過保護な愛執
噛みつくように言ったフレデリカに、ルビオが目を丸くする。

フレデリカの脳裏には、昨日の王妃の謁見の場面があった。

王妃の姿を見たのは初めてだった。

ひと目で、ルビオともイレーネ王女とも血が繋がっていないのがわかった。真っ白な冷たいプラチナブロンド。継息子とはいえ王であるルビオをひざまずかせ、台座から見下ろす瞳には愛情のかけらもない。

美しいけれど、それだけの人だ、とフレデリカは考えた。


『お前も、先王と兄王子が恋しいでしょう。もしも今、ふたりにお会いできたら、なにをお伝えしたいかしらね?』


立会人を絞った広間で、彼女はルビオにそう尋ねた。

こういう関係なのか、とフレデリカは納得した。ちりちりと、うなじの毛が逆立つような緊迫感が押し寄せた。

あからさまに言わないまでも、ふたりが消えた裏にルビオがいると、あきらかに疑っており、それを容赦なく匂わせる。

継母への敬意を表し、じっとひざまずくルビオの孤独が、痛いほどだった。


「わかったよ」


フレデリカの剣幕に、ルビオは噴き出した。他人事みたいな顔しないでよ、と言ってやりたくなった。


「約束ができないから、気持ちだけでも誓わせて」


温かい唇が頬に寄せられる。愛おしげにフレデリカの頭を抱き、なでながら。


「リッカが手に入らないなら、ぼくは生涯、誰も娶らない」

「ルビオ!」


なんてことを言うのか。


「一国民として、王のそんな勝手は見過ごせないわよ」

「勝手じゃない。ささやかな自由だ」

「正直、重いわ」

「だろうね、一緒に持つよ」


キスが頬からこめかみへ、鼻筋へと移る。それから憎まれ口を叩く唇へ。ついでに「それとね」と憎まれ口のお返しも。


「心変わりはきみの権利だから、許すよ」
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