気高き国王の過保護な愛執
ルビオは頬杖をつき、フレデリカを見つめた。

彼女は気づかず、日記への考察を続ける。


「その証拠に、式典や公務については書いているわ。そっけないけど」

「好きじゃなかったんだろうね」

「でも必ず、反省点を書き残してる」


髪よりも若干明るい茶色の瞳が、ルビオのほうを向く。


「私がこの日記から読み取れるのはね、真面目で、あんまり多くを語るほうでもなくて、自分を飾るのも得意じゃない、だけどちゃんと周りを見てる。そんな王子様の姿よ」


初めて会ったときから変わらない、まっすぐな視線。

朝日に霞む、埃っぽい納屋の中で。

あのときもこうして彼女は、白と灰色の世界に、鮮やかな色彩を持ち込んだ。


「これなんか好きよ。『騎士団の中にクラウスによく似た青年を発見。クラウスは"医者に眼を診てもらえ"と』。やりとりが味わい深くて笑えるわ」

「ぼくは、きみを初めてちゃんと見たときのことを、よく覚えてるよ」


だしぬけに持ち出された話題に、フレデリカがきょとんとする。小さなテーブルの上で、ルビオは彼女の手に、自分の手を重ねた。

フレデリカの目が一瞬そこに落ち、ふわっと耳の先が赤らむ。


「女神か天使かなって思ったんだよ」

「死んだ気でいたのに、助けちゃってごめんなさいね」


賛辞を素直に受け取るのが下手な、恥ずかしがり屋のフレデリカは、いつもこうやって混ぜっ返す。それも、頬を染めながら。


「今も思ってる」

「ルビオ、それってね、ちょっと刷り込みが入ってると思うの」

「ぼくは孵りたての雛か?」


その言いざまはさすがにないだろうと、傷ついた声を出すと、フレデリカは「近いものはあったと思うわ」と遠慮がちに言った。

たしかにあるかもしれないが、それなら矢を抜いていたオットーに惚れてもよかったわけで、やっぱり違う。
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