気高き国王の過保護な愛執
建物から飛び出したルビオを、焦がすような夏の照りつけと庭の緑のまぶしさが襲った。思わず足を止め、目をすがめる。

狭まった視界の中で、長い茶色の髪が揺れた。

ほっそりした姿、落ち着いた物腰。ほんの少し、目に入っただけで、そこだけ光が当たったようになる笑顔。


「リッカ!」


頭が理解する前に叫び、腰の高さの塀に片手をかけ、飛び越えた。彼女が驚いた顔で、こちらを振り向くのが見えた。

一直線に駆け寄って、身体ごとぶつかるみたいに腕に抱いた。

小さな悲鳴を無視して、がむしゃらに、夢中で抱きしめた。馴染んだ香りが鼻孔を満たし、心を落ち着かせる。全身の震えが消えていく。

すっと頭が冷え、腕の中のフレデリカが、なにか言っているのに気がついた。


「陛下、お戯れを!」

「え? へい…?」


そのときようやく、彼女がひとりではなかったことを知った。

草を摘んでいたんだろう、かごを手にした数名の侍女たちが、顔を赤らめたり目を細めたりしながら、ささっと立ち上がってどこかへ消える。


「…あ」


背後から、腕ごと拘束していたフレデリカを、そろそろと放す。

赤くなった顔がこちらを向き、じろっとルビオを睨んだ。


「あの、ごめ…」

「バカ!」

「ごめんって」

「せっかく地道に生徒を増やしたのに! あなたのおかげで逆戻りよ!」


生徒?


「リッカは今、城の人間に薬草の知識を植えつけてるのよ」


足元からの声に、はっと下を見ると、イレーネが草の上にしゃがみ込んで見上げていた。冷やかしの眼差しと、にいと口を引いた笑みを浮かべている。
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