気高き国王の過保護な愛執
「…よみがえらせたいの?」

「必要だと感じてる」


もう限界だ。

これ以上、謎を謎のままにしておくことはできない。民の王家への信頼はひび割れ、取り返しのつかないことになるだろう。王都は潰れ、国中が荒れる。

それに、自分自身がもう、なにを抱えているかわからない状態に耐えられないのだ、とルビオは考えた。


「あの男に聞いてみたらいいわよ」


イレーネが口を開いた。


「あの男?」

「占い師よ、前に会ってるでしょ。物知りだから、なにか知恵をくれるわ」

「どこにいるかわかるかい」

「こうやって話題にしていれば、すぐ現れるわよ」


まさか。

ルビオは半信半疑で、あたりを見回した。肩越しに振り返り、顔を戻した瞬間、さっきまで草木しかなかったはずの場所に、人影があった。とっさにフレデリカを引き寄せ、背中の陰にかばう。

ローブを目深にかぶった男は、曲がった背中で大儀そうに立ち、こちらに顔を向けている。


「どうやって…」

「あの人、"モウル"を知ってるんだわ。ますます大好き」


満足そうに笑うイレーネに「え?」と聞き返そうとしたときだった。


「お手伝いいたしましょう」


男がしわがれた声で言った。

いったいどうやって、と聞きたかったが、声は喉に張りついたようになり、口から出てこない。


「人払いをした夜に、もう一度お呼びください」


深々と頭を下げた男が、そのまま地面に溶けてしまいそうに見えた。とっさに呼び止めようとしたとき、ルビオより先にフレデリカが声をかけた。


「記憶が戻ったら、ルビオはどうなるの?」
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