気高き国王の過保護な愛執
ゲーアハルトとの一幕を思い出し、尋ねてみる。クラウスは形のいい眉をひそめ、悩むそぶりを見せた。


「なにをもって優しいというかですが…優しさを振りまく人間ではありませんでした。たとえばイレーネ王女や、そういった心を許した人の前でしか笑わないような、警戒心の強いところがあり」

「暗いな」

「束縛と緊張の中で育ちましたから。冷徹とまではいきませんが、そうですね、硬質、でしょうか、一言で表すなら」


うーんと自分の顎を指でつつきながら、クラウスがひねり出した言葉は、ルビオをぎくっとさせた。急いで「それじゃ今のおれは、だいぶ違うな」と笑い飛ばし、それを隠す。


「もしも今、おれが以前のおれに戻ったら、どう?」

「戻れるんですか?」

「わからないが、もしもの話」


クラウスは難しい顔で考え込む。


「硬さは、裏を返せば割れやすさです。かつてのディーターが、今のあなたのようにこの国を束ねられるかといったら」


整った顔立ちに、親友らしい率直な懸念と愛情が浮かんだ。


「正直、私は少し不安ですね」




どうやってこの部屋に入ってきたんだ。

部屋の片隅に佇むローブの男を見て、ルビオは驚愕した。

楽な服に着替え、呼ぼうと思ったらもうそこにいたのだ。

王城がひっそりと寝静まった夜半、ルビオはフレデリカだけを自室に呼んだ。

いつも通り、クラウスを介して来てもらったのだが、クラウスには目的も知らせず、またクラウスを呼ぶこともしなかった。

なぜ自分がそうしたのか、ルビオはわからなかった。

友人同士、みっともない姿をさらしたくないという心理でもはたらいたかと考えてみたが、そういうことでもないような気がする。


「ディーターはもろい人だったのね」

「男としては嫌だなあ、その響き」
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