気高き国王の過保護な愛執
「このまま押さえて」

「すまない。でも父上と兄上は、遺体も見つかっていないんだろう、なのに、なぜ…」

「毒薬の付着した小さな瓶が見つかったとのお話ですよ。敷地の隅で、気づかず誰かが踏んだんでしょうね、土に埋まった状態だったと」


ルビオの記憶の中、真っ暗な水面を、火花のようになにかが一瞬照らした。

"瓶"。

布越しに、血が止まるほどきつく指を握りしめる。


「…青い…玻璃の…?」

「え?」

「水晶をかたどった、蓋がついている…」


クラウスの顔が、みるみる青ざめた。目を見合わせ、ルビオは忠臣の瞳の中に、絶望の欠片が生じたのを見た。


「おれはその小瓶を、知っている」

「ディーター…」

「この目で、見ている…」


切り傷のある指先が熱く脈打つ。その手を胸のあたりに押しつけ、込み上げてくる不快感に耐えかね身体を折った。

これが知りたくて記憶を取り戻そうとしたんじゃないのか。

自分がやったのであればそうと、違うのなら違うと、はっきりさせようと決心したんじゃなかったのか。

なのに現実はこのざま。


「おれなのか」

「そうと決まったわけではありません、ディーター。自分を追い詰めないで」


だがこの王城内に、ディーター以外の誰が、先王と第一王子を殺害して利益を得るというのか。


「無欲のふりをして、おれは誰よりも王位に執着していたのかもしれない。誰からも顧みられることのなかった人生を、やり直したかったのかもしれない」

「そんなことのために、父王と兄上を手にかける人がいますか?」

「おれに聞くな! わからないんだ!」
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