気高き国王の過保護な愛執
舌なめずりをしているような声だった。女が隣に滑り込んできた。香油で光る肌と、柔らかな体温に包まれても、身体が言うことを聞かず、逃げることもできない。
はっと気がついた。
この香りだ。思考を根こそぎ奪っていく元凶は。
石畳に這いつくばるように半身をのせ、爪を立てても、湯から上がることもできない。ぐらつく視界の中、小部屋に人影を見た。
王妃だった。
また小瓶が目の前にかざされる。
「あなたのものですね」
そうだ、と言ってしまいそうになるのを、理性をかき集めて押し留めた。
女の手が、身体の上を這い回る。
あまりの理不尽さに、腹が立ち、悔しくて頭が沸騰しそうになった。
そして、今だけはやめてくれ、と出ない声で叫んだ。フレデリカが心の中にいる。傷つけてしまったフレデリカが、まだ生々しくそこにいる。
なのに、あのとき滾った身勝手な身体は、今も火照りを残したままで、ルビオの意思とは関係なく、熱を放っている。
女もそのことに気づいている。
「この小瓶の中身をご存じですね」
ああ、知っている。
声がすんなり出ていたら、言っていた。
熱い湯の中にいるというのに、冷たい汗がどっと噴き出す。耐えろ、耐えろ。
くすっと女が笑ったのが、ぴたりとくっついた肌から伝わってきた。
「すぐに言わせてさしあげます」
「さわるな…」
「強情もいつまでもちますか」
きつく唇を噛んだ。
リッカ、怖がらせてごめん。
だけどぼくは、きみじゃなきゃ嫌だ。
わずかに残っていた、正常な感覚が遠のいていくのを感じた。
力の入らない手を握りしめる。噛みしめた唇から血の味がする。
涙が滲む。
きみじゃなきゃ嫌だ、リッカ。
リッカ…!
はっと気がついた。
この香りだ。思考を根こそぎ奪っていく元凶は。
石畳に這いつくばるように半身をのせ、爪を立てても、湯から上がることもできない。ぐらつく視界の中、小部屋に人影を見た。
王妃だった。
また小瓶が目の前にかざされる。
「あなたのものですね」
そうだ、と言ってしまいそうになるのを、理性をかき集めて押し留めた。
女の手が、身体の上を這い回る。
あまりの理不尽さに、腹が立ち、悔しくて頭が沸騰しそうになった。
そして、今だけはやめてくれ、と出ない声で叫んだ。フレデリカが心の中にいる。傷つけてしまったフレデリカが、まだ生々しくそこにいる。
なのに、あのとき滾った身勝手な身体は、今も火照りを残したままで、ルビオの意思とは関係なく、熱を放っている。
女もそのことに気づいている。
「この小瓶の中身をご存じですね」
ああ、知っている。
声がすんなり出ていたら、言っていた。
熱い湯の中にいるというのに、冷たい汗がどっと噴き出す。耐えろ、耐えろ。
くすっと女が笑ったのが、ぴたりとくっついた肌から伝わってきた。
「すぐに言わせてさしあげます」
「さわるな…」
「強情もいつまでもちますか」
きつく唇を噛んだ。
リッカ、怖がらせてごめん。
だけどぼくは、きみじゃなきゃ嫌だ。
わずかに残っていた、正常な感覚が遠のいていくのを感じた。
力の入らない手を握りしめる。噛みしめた唇から血の味がする。
涙が滲む。
きみじゃなきゃ嫌だ、リッカ。
リッカ…!