気高き国王の過保護な愛執
重い手足を引きずって、這いつくばるように続き部屋を目指しながら、なぜ呼んだかに思い当たって、笑ってしまった。
がんばったから、褒めてほしくなったのだ。
「はは…」
なぜ女が自害すると思ったか、なぜ毒を仕込んでいるとわかったか。
それは、過去にも経験があったからだ。
身体が記憶を引きずり出してきた。幼少の頃から、あの手この手で命を狙われた体験。事故を装うこともあれば、毒を盛られたこともあった。
ディーターは一時期、食事を全く受けつけなくなり、その症状は成長してからも、まれに精神的に不安定になると訪れた。
泣いて楽になれるものなら泣いている。
「リッカ…」
きみを腕に抱いて眠りたいよ。
およそ一国の王が、夜に願うこととも思えない、ささやかで甘やかな夢。
だけどそれがぼくの、一番の、ただひとつの望みなんだよ。
笑って、リッカ。
すれ違った侍女に、違和感を抱いた。
フレデリカは振り返ったが、足早にどこかを目指していた侍女の姿はもうない。
頭巾からこぼれた金色の髪が濡れていた。それにこの時間に、侍女がひとりで、どこからどこへ行くのだろう?
ふと虫の知らせのようなものが働き、フレデリカはルビオの自室へ行くのをやめ、侍女が残していった水滴の跡を逆にたどることにした。
パラスの奥へと続く跡は、おそらく、王族だけが使える浴場から始まっている。
「ルビオ!」
誰も控えていないのを不審に思いながら、湯殿へ続く扉を開けたフレデリカが見たものは、軽石の床に力なく横たわるルビオの姿だった。
駆け寄って首筋の脈を取った。弱いが、正確に打っている。
目が薄く開き、次いで見開かれた。
がんばったから、褒めてほしくなったのだ。
「はは…」
なぜ女が自害すると思ったか、なぜ毒を仕込んでいるとわかったか。
それは、過去にも経験があったからだ。
身体が記憶を引きずり出してきた。幼少の頃から、あの手この手で命を狙われた体験。事故を装うこともあれば、毒を盛られたこともあった。
ディーターは一時期、食事を全く受けつけなくなり、その症状は成長してからも、まれに精神的に不安定になると訪れた。
泣いて楽になれるものなら泣いている。
「リッカ…」
きみを腕に抱いて眠りたいよ。
およそ一国の王が、夜に願うこととも思えない、ささやかで甘やかな夢。
だけどそれがぼくの、一番の、ただひとつの望みなんだよ。
笑って、リッカ。
すれ違った侍女に、違和感を抱いた。
フレデリカは振り返ったが、足早にどこかを目指していた侍女の姿はもうない。
頭巾からこぼれた金色の髪が濡れていた。それにこの時間に、侍女がひとりで、どこからどこへ行くのだろう?
ふと虫の知らせのようなものが働き、フレデリカはルビオの自室へ行くのをやめ、侍女が残していった水滴の跡を逆にたどることにした。
パラスの奥へと続く跡は、おそらく、王族だけが使える浴場から始まっている。
「ルビオ!」
誰も控えていないのを不審に思いながら、湯殿へ続く扉を開けたフレデリカが見たものは、軽石の床に力なく横たわるルビオの姿だった。
駆け寄って首筋の脈を取った。弱いが、正確に打っている。
目が薄く開き、次いで見開かれた。