秘密の携帯電話
「旭川?どうかした?」
「い、いえ!何でもありません!」
「そ?ならば見せてくれるよね?」

雪菜がおずおずと差し出した携帯をジッと眺めると、
明らかに視線を逸らした雪菜が目の前でソワソワしているのがわかる。
神崎はニヤッと口を緩めると携帯を開いた。
雪菜の態度から、どうせ待受け画面が恥ずかしい写真なんだろうということは安易に想像できる。
だから悪戯心に見ればいいと思った。
しかし、さすがに自分の写真を設定しているとは思わず
思考回路がストップする。

「だ、だから見せるのが嫌だったんです」

顔を赤らめた雪菜が携帯を奪い取ると、そのまま不自然な動きで神崎の横をすり抜けようとする。
切り抜けれたと思った瞬間、腕を掴まれ、引き戻された。
背後に神崎の気配を感じた雪菜が、身体を竦めたまま固まってしまう。


「こんなの見て、はいそうですかって返せないよね?」

後ろを振り返れない雪菜は終始俯くしかなく、今すぐに消えてしまいたいと
思える程恥ずかしくなる。

「これ、いつ撮ったやつ?」

携帯画面を雪菜に見えるように腕を伸ばし、ちらつかせる神崎はどこか楽しそうにしている。

「えーと…一か月ぐらい前に神崎部長が会社に泊まった時です」
「ふ~ん…」

恐る恐る神崎の顔を見ようと首をゆっくり後ろに向けようとした瞬間、
目が合う。
それだけで体全体がカッと熱を持つ。
ドクドクと心臓がいつもより早く打ち付ける。

「削除」
「わーーーーー!!」

携帯を弄り、写真の削除を選択する神崎に思わず襲い掛かるような体制を取ってしまった。
今、一番大切にしていた写真を削除されかけ、夢中で止めようと必死になった結果まさかの体制になったが、
その不意をついて神崎が掴んでいた右手をそのまま自分に引き寄せ、顔を近づけた。
チュッと音を出しながら雪菜の唇を覆うと、何度も啄むようなキスをした。

「なっ…ちょっ…う…」

何度も角度を変えての止まらないキスに体全体がおかしくなってしまう。
逃げようと体を反らせるが、腰に手を回し逃げれないように抱きとめられた。
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