告白の時間
「ごめん千歳、オレは千歳にヒドイ事をした…」

千歳は首を横にふると、返事の代わりに回していた腕に力を込めた。

花園にふれた所から、花園の悲しみが伝わってくる…泣いてるの…?

「もう…いいんだよ」

「…うん…」

花園は声のふるえが伝わらないように千歳を強く抱きしめた。

流れ込んでくる花園の複雑な感情を感じながら、千歳は花園も苦しんでいた事を初めて知る。

放せないと思っていたものから千歳は、ゆっくりと手を放していった…



夜風が髪をゆらしていく…カーラジオからは別れの歌特集と題し、切ないメロディーが流れている。

夜の車道は対向車もまばらで、軽快にジープは駅へと走っていた。

DJが今かかっていた曲が、オフコースの″さようなら″だと告げたのをきっかけに鳴海が口を開いた。

「…で、どうだった?」

助手席でだんまりを決め込んでいる花園に、鳴海は質問してみた。

「うん…ねぇ鳴海、オレ昔さぁ、千歳に告白された事があるんだよね…」

質問には答えず、花園は唐突に昔の話をはじめた。

鳴海はあえて何も言わずに、花園の次の言葉を待つ。
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