告白の時間
「うん…でもその前にお願いがあるんだけど」

「?何?」

「…こっち向いて、目をつぶってくれる?」

「?…うん」

千歳の座っていたカウンター席の左隣に座ると、回転イスを回して千歳の方を見た。

なんとなく両手はひざの上においたりして、何か子犬みたいじゃない?…主人の言うことを素直に聞くイメージ…信頼しきった感じ…
あまり深く考えずに目を閉じる。闇の向こうに千歳が近くにいるのを感じる…

左頬に千歳の手がふれたあと…そっと自分の唇に柔らかいものがふれた。温かくて気持ちいい…ゆっくり離れていくと千歳が言った。

「…ドキドキした?」

千歳から出された質問に正直に答える…しかあるめぇ…

「…しなかった…」

千歳がカウンターに倒れ込んで「やっぱり…」と呟いている。

「いや、むしろ我が家の愛犬ごん太をほうふつとさせるような…」

正直ついでに率直な感想がつい出てしまう。当たり前だが、ぶん殴られる。痛い…今までで一番痛いかも…本当ごめんなさい、心から謝ります。

もうごまかし切れないほど、結論が出てしまった。しかけてきたのは千歳だ…させてしまったのは自分だ…申し訳なさに、うなだれるしかない。

「…何か飲む?」

優しい声だった。でも不自然なまでに優しい声…


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